Debian 小史 --------------------------------------------------------------------- version: 13.1 (2024-08-07) --------------------------------------------------------------------- Copyright © 1999-2020 Debian Documentation Team < debian-doc@lists.debian.org> Copyright © 2023 Debian Publicity Team < debian-publicity@lists.debian.org> Debian Publicity Team     この文書は、加えた変更点を明確に記していれば自由に再配布、改変が できます。 この文書は有料、無料を問わず再配布できますし、改変 (別の種類のメ     ディア、ファイルフォーマットへの変換や別の言語への翻訳も含む) が できますが、原文からの変更点が明確に記されていることが条件です。     次の方によるこの文書への大きな貢献がありました。 * Javier Fernández-Sanguino * Bdale Garbee * Hartmut Koptein * Nils Lohner     * Will Lowe * Bill Mitchell * Ian Murdock * Martin Schulze * Craig Small Abstract この文書は、Debian プロジェクトの歴史と目標について述べます。 --------------------------------------------------------------------- Table of Contents 1. 序文 -- Debian プロジェクトとは何か? 1.1. 起源 1.2. Debian の発音 2. プロジェクトリーダー 3. Debian リリース 4. 詳細な歴史 4.1. 0.x リリース 4.2. 初期の Debian パッケージシステム 4.3. 1.x リリース 4.4. 2.x リリース 4.5. 3.x リリース 4.6. 4.x リリース 4.7. 5.x リリース 4.8. 6.x リリース 4.9. 7.x リリース 4.10. 8.x リリース 4.11. The 9.x Releases 4.12. The 10.x Releases 4.13. The 11.x Releases 5. Some Important Events 5.1. 2000 年 10 月: パッケージプールの実装 5.2. 2002 年 11 月: Debian サーバ焼失 5.3. November 2003: Several Debian servers hacked 6. Remembering People We Have Lost 6.1. 2000 年 7 月: Joel Klecker さん逝去 6.2. 2001 年 3 月: Christopher Rutter さん逝去 6.3. 2001 年 3 月: Fabrizio Polacco さん逝去 6.4. 2002 年 7 月: Martin Butterweck さん逝去 6.5. 2004 年 5 月: Manuel Estrada Sainz さん、Andrés García Solier さん逝去 6.6. 2005 年 7 月: Jens Schmalzing さん逝去 6.7. 2008 年 12 月: Thiemo Seufer さん逝去 6.8. July 2009: Steve Greenland died 6.9. 2010 年 8 月: Frans Pop さん逝去 6.10. 2011 年 4 月: Adrian von Bidder さん逝去 6.11. 2013 年 5 月: Ray Dassen さん逝去 6.12. 2014 年 7 月: Peter Miller さん逝去 6.13. 2015 年 2 月: Clytie Siddall さん逝去 6.14. 2015 年 12 月: Ian Murdock さん逝去 6.15. 2016 年 9 月: Kristoffer H. Rose さん逝去 6.16. September 2018: Innocent de Marchi died 6.17. March 2019: Lucy Wayland died 6.18. June 2020: Robert Lemmen died 6.19. June 2020: Karl Ramm died 6.20. April 2021: Rogério Theodoro de Brito died 6.21. September 2023: Abraham Raji died 6.22. December 2023: Gunnar Hjalmarsson died 6.23. July 2024: Peter De Schrijver died 7. 次は何? A. Debian 宣言 A.1. Debian Linux とは何か? A.2. なぜ Debian を作成するのか? A.3. Debian はこれらの問題に終止符を打つためにどのように努力する つもりなのか? Chapter 1. 序文 -- Debian プロジェクトとは何か? Debian プロジェクトは、フリーソフトウェアだけからなるオペレーティ ングシステムディストリビューションを作るために努力する、世界規模 のボランティアグループです。このプロジェクトの今までの主要な成果     物は、Debian GNU/Linux ソフトウェアディストリビューションです。こ れは Linux オペレーティングシステムカーネルと、何千ものパッケージ 化済みのアプリケーションを含みます。程度こそ違うもののさまざまな プロセッサタイプに対応しています。その中には32/64ビットの x386、 ARM、MIPS、PowerPC、IBM S/390 が含まれます。 Debian は Software in the Public Interest, Inc., (SPI) 設立の動機 となりました。SPI はニューヨークを本拠地とする非営利団体です。     Debian およびその他の同様の組織が、オープンハードウェアおよびソフ トウェアを開発するのを援助するために設立されました。とりわけ SPI は、Debian プロジェクトが米国で税控除可能な寄付を受け取れる仕組み を提供しています。 フリーソフトウェアについての詳細は、Debian 社会契約と、それに関連     する Debian フリーソフトウェアガイドラインや、フリーとは何だろう? のページを参照してください。 1.1. 起源 The Debian Project was officially founded by Ian Murdock on August 16th, 1993. (There is also a scanned printout of that announcement.) At that time, the whole concept of a "distribution" of Linux was new. Ian intended Debian to be a     distribution which would be made openly, in the spirit of Linux and GNU (read his manifesto provided as an appendix to this document for more details). The creation of Debian was sponsored by the FSF's GNU project for one year (November 1994 to November 1995). Debian は、注意深くそして良心的にまとめられるように、そして同様の 配慮で保守されサポートされるように意図されました。Debian はフリー     ソフトウェアハッカーの小さく緊密なグループとして始まり、しだいに 開発者およびユーザの大規模でよく組織化されたコミュニティへと成長 しました。 プロジェクトの開始当初、Debian はすべての開発者およびユーザに自ら の作業で貢献する方法が開かれている唯一のディストリビューションで した。現在でも Linux の重要な配布団体としては、唯一営利団体ではあ     りません。Debian はプロジェクトを組織するための憲章、社会契約そし てポリシー文書を持つ唯一の大プロジェクトです。Debian はまた、アッ プグレード時のシステムの整合性を保証するために、パッケージ間の関 係についての詳細な依存情報によって「細かくパッケージ化された」唯 一のディストリビューションでもあります。 高品質を達成して維持するために、Debian はソフトウェアをパッケージ     化して配布するための広範囲にわたるポリシーと手続き一式を採用しま した。これらの基準は、Debian の主要な要素すべてをオープンで目に見 える形で実装するツール、自動化、文書によって裏打ちされています。 1.2. Debian の発音 Debian の公式の発音は「デビアン (deb ee n)」です。この名前は、     Debian の創設者である Ian Murdock さんとその妻である Debra さんに 由来します。 Chapter 2. プロジェクトリーダー     Debian には 1993 年の創設以来、何人かのリーダーがいました。     Ian Murdock さんは Debian を 1993 年 8 月に創設し、1996 年 3 月ま でリーダーを務めました。     Bruce Perens さんは 1996 年 4 月から 1997 年 12 月まで Debian の リーダーを務めました。     Ian Jackson さんは 1998 年 1 月から 1998 年 12 月まで Debian のリ ーダーを務めました。     Wichert Akkerman さんは 1999 年 1 月から 2001 年 3 月まで Debian のリーダーを務めました。     Ben Collins さんは 2001 年 4 月から 2002 年 4 月まで Debian のリ ーダーを務めました。     Bdale Garbee さんは 2002 年 4 月から 2003 年 4 月まで Debian のリ ーダーを務めました。     Martin Michlmayr さんは 2003 年 3 月から 2005 年 3 月まで Debian のリーダーを務めました。     Branden Robinson さんは 2005 年 4 月から 2006 年 4 月まで Debian のリーダーを務めました。     Anthony Towns さんは 2006 年 4 月から 2007 年 4 月まで Debian の リーダーを務めました。     Sam Hocevar さんは 2007 年 4 月から 2008 年 4 月まで Debian のリ ーダーを務めました。     Steve McIntyre さんは 2008 年 4 月から 2010 年 4 月まで Debian の リーダーを務めました。     Stefano Zacchiroli さんは 2010 年 4 月から 2013 年 4 月まで Debian のリーダーを務めました。     Lucas Nussbaum さんは 2013 年 4 月から 2015 年 4 月まで Debian の リーダーを務めました。     Neil McGovern さんは 2015 年 4 月から 2016 年 4 月まで Debian の リーダーを務めました。     Mehdi Dogguy led Debian from April 2016 until April 2017.     Chris Lamb led Debian from April 2017 until April 2019.     Sam Hartman led Debian from April 2019 until April 2020.     Jonathan Carter led Debian from April 2020 until April 2024.     Andreas Tille was elected in April 2024 and is our current leader. Chapter 3. Debian リリース     Debian 0.01 から 0.90 まで (1993 年 8 月 - 12 月) Debian 0.91 (1994 年 1 月): このリリースは、パッケージのインスト     ールおよび削除ができる単純なパッケージシステムを備えていました。 Debian プロジェクトは、この時点で数十人規模に成長していました。 Debian 0.93R5 (1995 年 3 月): この時点までに、各パッケージに対す     る責任が開発者に明確に割り当てられました。そして基本システムのイ ンストール後は、パッケージマネージャ (dpkg) がパッケージのインス トールに使われました。 Debian 0.93R6 (1995 年 11 月): dselect が登場しました。a.out バイ ナリ形式を使う最後の Debian リリースです。約 60 名の開発者がいま した。最初の master.debian.org サーバが Bdale Garbee さんによって     構築され、0.93R6 リリースと並行して HP によって運用されました。 Debian の開発者が各リリースを構築するための特定のマスターサーバを 設置することは、Debian のミラーネットワークの編成に直結しました。 また今日のプロジェクトを管理するのに使われているポリシーや手続き の多くを開発することにも間接的につながりました。 リリースされなかった Debian 1.0: CD ベンダの InfoMagic 社が、 Debian の開発版リリースを前ぶれもなく出荷し、1.0 と称しました。 1995 年 12 月 11 日、Debian と InfoMagic 社は共同で当該リリースが 誤ったものであると発表し、Bruce Perens さんは次のように説明しまし た。すなわち "Debian 1.0" として"InfoMagic Linux Developer's     Resource 5-CD Set November 1995" に収録されたデータは Debian の 1.0 リリースではなく、部分的に ELF 形式となっているだけの初期開発 版であること。そしておそらく起動せず、動作も不安定で、リリースさ れた Debian システムの品質を表わしてはいないことなどです。未熟な CD 版と実際の Debian リリースとの混乱を避けるため、Debian プロジ ェクトは次期リリースを "Debian 1.1" と改名しました。CD 上の未熟な Debian 1.0 は不完全であり、使うべきではありません。 1995 年の終わり頃、master.debian.org の運用が HP から i-Connect.Net に移りました。i-Connect.Net の創立者である Michael Neuffer さんと Shimon Shapiro さんが、master を自身のハードウェア     で 1 年余りにわたって運用しました。この期間、現在の新規メンテナプ ロセスに相当する機能を始めとして多数のサービスを Debian に提供し ていただき、また、初期の Debian ミラーネットワークの発展に多大な ご支援をいただきました。 Debian 1.1 Buzz (1996 年 6 月 17 日): コードネームがついた最初の Debian リリースです。これ以降の全リリースと同じく、映画 Toy Story シリーズ中のキャラクターに由来します... この場合は Buzz Lightyear     です。この頃には、Bruce Perens さんが Ian Murdock さんからプロジ ェクトリーダー職を引きついでおり、Bruce さんはこの映画を作った Pixar 社に勤めていました。このリリースは完全に ELF 形式で、Linux カーネル 2.0 を使っており、474 個のパッケージを収録していました。 Debian 1.2 Rex (1996 年 12 月 12 日): 映画 Toy Story に登場するプ     ラスチックの恐竜から名付けられました。120 人の開発者によって保守 される 848 個のパッケージから構成されていました。 Debian 1.3 Bo (1997 年 7 月 5 日): 女羊飼いである Bo Peep から名     付けられました。200 人の開発者によって保守される 974 個のパッケー ジから構成されていました。 Debian 2.0 Hamm (1998 年 7 月 24 日): 映画 Toy Story に登場する豚 の貯金箱から名付けられました。複数のアーキテクチャに対応した最初     の Debian リリースで、Motorola 68000 シリーズアーキテクチャ対応が 加わりました。Ian Jackson さんをプロジェクトリーダーとし、libc6 への移行を果たしました。そして 400 人以上の開発者による 1500 個以 上のパッケージから構成されていました。 Debian 2.1 Slink (1999 年 3 月 9 日): 映画に登場するこそこそした 犬から名付けられました。さらに 2 種類のアーキテクチャが追加されま した。Alpha と SPARC です。Wichert Akkerman さんをプロジェクトリ ーダとし、約 2250 個のパッケージから構成されていました。公式のセ     ットでは CD 2 枚を必要としました。主要な技術革新は、新しいパッケ ージ管理インターフェイスである apt の導入でした。apt は幅広く真似 されましたが、Debian が成長していくことから生じる問題に取り組み、 オープンソースオペレーティングシステム上でのパッケージの取得とイ ンストールに新しいパラダイムを確立しました。 Debian 2.2 Potato (2000 年 8 月 15 日): 映画 Toy Story に登場する 「Mr Potato Head」から名付けられました。PowerPC と ARM アーキテク     チャへの対応が追加されました。Wichert さんが引き続きプロジェクト リーダを務め、450 人以上の Debian 開発者によって保守される 2600 個以上のソースパッケージを元にした、3900 個以上のバイナリパッケー ジから構成されていました。 Debian 3.0 Woody (2002 年 7 月 19 日): 映画 Toy Story の主人公で あるカウボーイの「Woody」から名付けられました。さらに多くのアーキ テクチャ対応が追加されており、その内訳は IA-64, HP PA-RISC, MIPS (ビッグエンディアン), MIPS (リトルエンディアン)、S/390 などです。     また、米国内で緩和された輸出制限のために暗号化ソフトウェアを収録 した最初のリリースであり、今では Qt とのライセンス問題が解決して いる KDE を最初に収録したリリースでもあります。最近までプロジェク トリーダーを務めた Bdale Garbee さんと 900 人以上の Debian 開発者 により、8,500 個以上のパッケージが収録され、公式のセットは 7 枚の バイナリ CD で構成されていました。 Debian 3.1 Sarge (6 June 2005): named for the sergeant of the Green Plastic Army Men. No new architectures were added to the release, although an unofficial AMD64 port was published at the same time and distributed through the new Alioth project hosting site. This release features a new installer: debian-installer, a modular piece of software that feature automatic hardware     detection, unattended installation features and was released fully translated to over thirty languages. It was also the first release to include a full office suite: OpenOffice.org. Branden Robinson had just been appointed as Project Leader. This release was made by more than nine hundred Debian developers, and contained around 15,400 binary packages and 14 binary CDs in the official set. Debian 4.0 Etch (2007 年 4 月 8 日): 映画のおもちゃのお絵かきボー ドから名付けられました。アーキテクチャが 1 つこのリリースで追加さ れました: AMD64 です。そして、m68k の公式サポートが打ち切られまし た。引き続き debian-installer を使っていましたが、このリリースで はグラフィカルインストーラ、暗号技術によるダウンロード済みパッケ ージの検証、より柔軟なパーティショニング (暗号化パーティションも サポート)、メール設定の簡略化、より柔軟なデスクトップ選択機能、単 純にしつつ改良を加えたローカライゼーション、レスキューモードなど     の新モードの追加がありました。以前 2 つあったインストールフェーズ がついに統合され、インストール作業中のマシンの再起動が不要になり ました。この新インストーラのグラフィカル版では文字結合機能や複雑 な言語を使用するスクリプトもサポートしたので、50 を超える言語への 翻訳が利用できるようになりました。プロジェクトリーダーに Sam Hocevar さんがちょうどこの日選出され、また、1030 人以上の Debian 開発者がいました。およそ 18,000 個のパッケージが収録され、公式の セットは 20 枚のバイナリ CD (3 枚の DVD) で構成されていました。さ らに、デフォルトのデスクトップ環境とは別のものをインストールでき る 2 枚のバイナリ CD が利用できるようになりました。 Debian 5.0 Lenny (2009 年 2 月): 映画 Toy Story のぜんまい仕掛け の双眼鏡から名付けられました。アーキテクチャが 1 つこのリリースで 追加されました: ARM EABI (armel) で、新しい ARM プロセッサ向けサ     ポートを提供します。そして古い ARM 移植版 (arm) は廃止予定となり ました。 m68k 移植版はこのリリースに含まれていませんが、まだ不安 定版ディストリビューションでは提供されていました。FreeBSD 移植版 は含まれませんでした。この移植版の品質を高める作業のほとんどは終 えたものの、このリリースの選定要件をまだ満たしませんでした。 このリリースでは、多くのストレージデバイスで使われている Marvell 製 Orion プラットフォームへのサポートを追加したことで、サポートす る小型機器が増加しました。また、いくつかのネットブックのサポート     も提供しました。組み込み ARM システム向けにいくらかの新しいビルド ツールが追加され、Debian パッケージをクロスビルドし圧縮できるよう になりました。また、様々なベンダーのネットブックがサポートされる ようになり、このディストリビューションは比較的性能の低いコンピュ ータに、より適応するソフトウェアを提供しました。 また、このリリースはフリーなバージョンの Sun 製 Java テクノロジを     提供する最初のリリースで、Java アプリケーションが main セクション で提供できるようになりました。     Debian 6.0 Squeeze (2011 年 2 月): 緑色をした 3 つ目のエイリアン から名付けられました。     このリリースは 2010 年 8 月 6 日、多くの Debian 開発者が第 10 回 DebConf でニューヨーク市に集まっているときにフリーズされました。 2 つのアーキテクチャ (alpha と hppa) が打ち切られましたが、新たな FreeBSD 移植版 (kfreebsd-i386 と kfreebsd-amd64) アーキテクチャ 2 つがテクノロジープレビューとして利用できるようになりました。カー     ネルとユーザランドのツールや (先進的なデスクトップの機能はまだな いものの) 一般的なサーバソフトウェアを収録しています。これは Linux ディストリビューションが Linux ではないカーネルの利用も行え るよう拡張された、初めての例でした。 この新リリースでは依存関係ベースの起動シーケンスを導入し、init ス     クリプトを並列に処理できるようになり、システムの起動を高速化しま した。 Debian 6 was the first release that benefited from Long Term Support (LTS), a project to extend the lifetime of all Debian stable releases to (at least) 5 years. Debian LTS was not handled     by the Debian Security team, but by a separate group of volunteers and companies interested in making it a success. Debian 6 was supported until the end of February 2016, and limited to i386 and amd64 architectures.     Debian 7.0 Wheezy (2013 年 5 月): 赤い蝶ネクタイを締めたゴム製の おもちゃのペンギンから名付けられました。 このリリースは 2012 年 7 月 30 日、多くの Debian 開発者が第 12 回     DebConf でニカラグアのマナグアに集まっているときにフリーズされま した。 アーキテクチャが1つ (armhf) このリリースで追加されました。また、 このリリースでは複数アーキテクチャのサポートが導入され、ユーザが     複数のアーキテクチャのパッケージを同一のマシンにインストールでき るようになりました。インストールプロセスの改善で、視覚的に不自由 な人がソフトウェアによる音声案内を利用してシステムをインストール できるように初めてなりました。     UEFI ファームウェアを採用した機器でのインストール及びブートをサポ ートする最初のリリースにもなりました。     Debian 7 had Long Term Support (LTS) for i386, amd64, armel and armh architectures until the end of May 2018.     Debian 8.0 Jessie (2015 年 4 月): Toy Story 2 で初めて登場したカ ウガールの人形から名付けられました。 This release introduced for the first time the systemd init system as default. Two new architectures were introduced: arm64     and ppc64el and three architectures were dropped: s390 (replaced by s390x), ia64 and sparc. The Sparc architecture had been present in Debian for 16 years, but lacked developer support to make it maintainable in the distribution. The release included many security improvements such as a new kernel that nullified a whole set of security vulnerabilities (symlink attacks), a new way to detect packages which were under     security support, more packages built with hardened compiler flags and a new mechanism (needrestart) to detect sub-systems which had to be restarted in order to propagate security updates after an upgrade.     Debian 8 had Long Term Support (LTS) for i386, amd64, armel and armh architectures until the end of June 2020.     Debian 9 Stretch (June 2017): named for the toy rubber octopus with suckers on her eight long arms that appeared in Toy Story 3.     The release was frozen on February 7th, 2017.     Debian 9 was dedicated to the project's founder Ian Murdock, who passed away on 28 December 2015. Support for the powerpc architecture was dropped in this release, whileas the mips64el architecture was introduced. This release introduced debug packages with a new repository in the archive, packages from this repository provided debug symbols     automatically for packages. Firefox and Thunderbird returned to Debian, replacing their debranded versions Iceweasel and Icedove, which were present in the archive for more than 10 years. Thanks to the Reproducible Builds project, over 90% of the source packages included in Debian 9 were able to build bit-for-bit identical binary packages.     Debian 9 had Long Term Support (LTS) for i386, amd64, armel and armh architectures until the end of June 2022.     Debian 10 Buster (July 2019): named for Andy's pet dog, received as Christmas present in the end of Toy Story. With this release Debian for the first time included a mandatory access control framework enabled per default (AppArmor). It was also the first Debian release to ship with Rust based programs such as Firefox, ripgrep, fd, exa, etc. and a significant number of Rust based libraries (more than 450). In Debian 10 GNOME     defaults to using the Wayland display server instead of Xorg, providing a simpler and more modern design and advantages for security. The UEFI ("Unified Extensible Firmware Interface") support first introduced in Debian 7 continued to be greatly improved in Debian 10, being included for amd64, i386 and arm64 architectures and working out of the box on most Secure Boot-enabled machines.     Debian 10 has Long Term Support (LTS) for i386, amd64, armel and armh architectures until the end of June 2024.     Debian 11 Bullseye (August 14th, 2021): named for Woody's wooden toyhorse that appeared in Toy Story 2. This release contained over 11,294 new packages for a total count of 59,551 packages, along with a significant reduction of over     9,519 packages which were marked as "obsolete" and removed. 42,821 packages were updated and 5,434 packages remained unchanged. Debian 11 allowed driverless printing and scanning without the need for vendor specific (often non-free) drivers, and shipped a     Linux kernel with support for the exFAT filesystem. The mips architecture support was dropped, keeping support for mipsel (little-endian) architectures for 32-bit hardware and mips64el architecture for 64-bit little-endian hardware. The Debian Med team took part in the fight against COVID-19 by packaging software for researching the virus on the sequence     level and for fighting the pandemic with the tools used in epidemiology; this work continued with focus on machine learning tools for both fields.     Debian 12 Bookworm (June 10th, 2023): named for a green toy worm with a built-in flashlight that appeared in Toy Story 3. This release contained over 11,089 new packages for a total count of 64,419 packages, while over 6,296 packages have been removed     as "obsolete". 43,254 packages were updated in this release. The overall disk usage for bookworm is 365,016,420 kB (365 GB), and is made up of 1,341,564,204 lines of code. Following the 2022 General Resolution about non-free firmware, the Debian Social Contract got adjusted and a new archive area called non-free-firmware got introduced, making it possible to separate non-free firmware from the other non-free packages. Most     non-free firmware packages have been moved from non-free to non-free-firmware. This separation makes it possible to build a variety of official installation images. And it makes installing Debian on popular hardware using the official Debian installer much easier.     A total of nine architectures are officially supported for bookworm.     The Debian Cloud team publishes bookworm for three popular cloud computing services. Between releases, in Bug#978636 (Feb 2021), the Technical Committee resolved that Debian bookworm would support only the merged-usr^[1] root filesystem layout, dropping support for the     non-merged-usr layout. For systems installed as buster or bullseye there would be no changes to the filesystem; however, systems using the older layout would be converted during the upgrade. Thanks to the combined work of the Debian Security team and the     Debian Long Term Support team, bookworm will be supported on four architectures untill June 2028 (5 years after release).     Debian 13 Trixie (as of August 2024 the testing distribution): Trixie is a blue toy Triceratops that appeared in Toy Story 3. --------------------------------------------------------------------- ^[1] usr-merge (or merged-usr or /usr-move) is a filesystem layout where the traditional unix directories /bin, /sbin, /lib and /lib64 are replaced by symbolic links to their counterparts     under /usr. So e.g. /bin is replaced by a symlink to /usr/bin . In 2012, usr-merge was implemented by Fedora Linux as well as by Ubuntu Linux. See also The Case For The Usr Merge and the Bookworm Release Notes. Chapter 4. 詳細な歴史 4.1. 0.x リリース Debian は、当時 Purdue 大学の学部在校生であった Ian Murdock さん によって 1993 年 8 月に生まれました。Debian は、フリーソフトウェ     ア財団 (Richard Stallman さんによって創られた団体で、一般公衆利用 許諾契約書 (GPL) と関係があります) の GNU Project によって 1 年間 -- 1994 年 11 月から 1995 年 11 月まで -- 援助を受けました。     Debian 0.01 から Debian 0.90 までは 1993 年 8 月から 12 月までの 間にリリースされました。Ian Murdock さんは次のように書いています: 「Debian 0.91 は 1994 年 1 月にリリースされました。原始的なパッケ ージシステムを備えており、ユーザはパッケージを操ることができまし たが、それ以外のことはほとんど何もできませんでした (依存関係や、     それに類する事はまったく存在していませんでした)。その頃には、 Debian の作業をしている人が数十名いましたが、まだ私自身の手でリリ ースの取りまとめ作業の大半を行なっていました。0.91 は、このように して行なわれた最後のリリースです。 1994 年の大部分は、他の人たちがより効果的に貢献できるよう Debian プロジェクトを組織するのに、そして dpkg (これについては主に Ian     Jackson さんが責任を負っていました) について作業するのに費やされ ました。私が覚えているかぎり、1994 年には公式なリリースはありませ んでしたが、手続きを正しくするための作業中に数回の内部リリースが ありました。 Debian 0.93 Release 5 が 1995 年 3 月に生まれました。これは Debian の最初の「現代的な」リリースでした: その頃にはさらに多くの     開発者がいて (正確に何人なのか覚えていませんが)、それぞれが自分の パッケージを開発し、基本システムをインストールした後でこれらすべ てのパッケージをインストールしたり保守したりするのに dpkg が使わ れていました。 Debian 0.93 Release 6 は 1995 年 11 月に生まれました。これは     a.out 形式での最後のリリースでした。0.93R6 では約 60 人の開発者が パッケージを開発していました。私の記憶が正確ならば、dselect は 0.93R6 で初めて登場しました」 Ian Murdock さんは、Debian 0.93R6 は「いつでも私の大好きな Debian リリースだった」とも書いていますが、個人的な偏見がある可能性も認 めています。なぜなら、Murdock さんは Debian 1.0 の試作中である 1996 年 3 月に、プロジェクトで活動するのをやめているからです。     Debian 1.0 は、実際には Debian 1.1 としてリリースされました。これ は、CD-ROM 製造者がリリースされていないバージョンを誤って Debian 1.0 と称してしまった後の混乱を避けるためです。この出来事は、ベン ダがこの種の誤りを避けるのをプロジェクトが助ける方法としての「公 式の」CD-ROM イメージという概念につながりました。 1995 年 8 月 (Debian 0.93 Release 5 と Debian 0.93 Release 6 との 間) に、Hartmut Koptein さんが Motorola m68k 系列への Debian の最 初の移植を開始しました。Koptein さんは「とても多くのパッケージは i386 中心主義 (リトルエンディアン、-m486、-O6、libc4 専用) で、自     分のマシン (Atari Medusa 68040、32 MHz) 上に出発点となるパッケー ジを揃えるのに苦労しました。3 か月後 (1995 年 11 月) には、入手可 能な 250 個のパッケージのうち 200 個をアップロードしましたが、す べて libc5 用でした!」と報告しています。後に Koptein さんは、 Vincent Renardias さんや Martin Schulze さんと一緒に PowerPC 系列 への移植を始めました。 この頃には、Debian プロジェクトは他のアーキテクチャへの数種の移植     版と、新しい (Linux ではない) カーネル、すなわち GNU Hurd マイク ロカーネルへの移植版や、少なくとも BSD カーネルの 1 フレーバを含 むまでに成長していました。     初期のプロジェクトメンバーである Bill Mitchell さんは、Linux カー ネルについて次のように回想しています。 「...Debian が生まれたときは 0.99r8 と 0.99r15 の間でした。長い間     、私は 20 MHz の 386 ベースなマシン上でカーネルを 30 分以内に構築 することができました。そして同じ時間で、Debian のインストールを 10MB 未満のディスクスペースに行なうことができました。 ... Ian Murdock さん、私、Ian Jackson さん、苗字を思い出せない別 の Ian さん、Dan Quinlan さん、そして名前を思い出せない他の人たち     を最初のグループとして覚えています。Matt Welsh さんは最初のグルー プの一部か、かなり早い段階で参加しました (その後、プロジェクトか ら離れました)。誰かがメーリングリストを用意し、私たちはうまくやっ ていました。 思い出せるかぎりでは、私たちは計画を立ててから始めたわけではなく 、計画を高度に組織化された形にまとめてから始めたわけでもありませ んでした。これははっきり思い出せますが、私たちは開始直後から、パ ッケージのまったく無作為なコレクションを作るためのソースを集めは     じめました。時間がたつにつれ、ディストリビューションの中核をまと めるために必要なものを集めるのに専念するようになりました: カーネ ル、シェル、update、getty、システムを初期化するのに必要なその他の さまざまなプログラムやサポートファイル、そして中核となるユーティ リティ一式です」 4.2. 初期の Debian パッケージシステム プロジェクトのごく初期の段階では、メンバーはソースのみのパッケー ジを配布することを考えました。各パッケージは上流のソースコードと Debian 化されたパッチファイルから構成され、ユーザはソースを展開し 、パッチを当て、自分でバイナリをコンパイルするわけです。しかし、     すぐにバイナリ配布のための何らかの仕組みが必要だと気がつきました 。Ian Murdock さんによって書かれ、dpkg と呼ばれた最初のパッケージ 化ツールは、Debian 特有のバイナリ形式でパッケージを作成しました。 さらに後で展開して、パッケージ内のファイルをインストールするのに も使えました。 Ian Jackson さんがすぐにパッケージ化ツールの開発を引きつぎ、ツー ル自体の名前を dpkg-deb に変更し、dpkg-deb の使用を容易にし今日の Debian システムの依存や競合を提供するための dpkg と名付けられたフ     ロントエンドプログラムを書きました。これらのツールによって作られ たパッケージには、そのパッケージを作るのに使われたツールのバージ ョンを示すヘッダがあり、tar によって作られたアーカイブ (制御情報 によってヘッダとは分けられていました) へのオフセットがファイル内 にありました。 およそこの頃、プロジェクトメンバー間で論争がおきました -- dpkg-deb によって作られた Debian 特有のフォーマットは、ar プログ ラムによって作られる形式に取って代わられるべきではないかと思った 人がいました。何度かファイル形式が変更され、それに対応してパッケ     ージ化ツールが変更された後で、ar 形式が採用されました。この変更の 鍵となる価値は、あらゆる Unix 似なシステム上で、信頼できない実行 形式を走らせる必要なしに Debian パッケージを展開できるようになっ たということです。言いかえれば、'ar' や 'tar' といったすべての Unix システムに備わっている標準的なツールさえあれば、 Debian バイ ナリパッケージを展開し中身を調べることができるということです。 4.3. 1.x リリース Ian Murdock さんが Debian を離れるとき、Murdock さんは Bruce Perens さんを次のプロジェクトリーダーに指名しました。Bruce さんが Debian に最初に興味を抱いたのは、ハム無線オペレータの役に立つ Linux ソフトウェアをすべて含む「Linux for Hams」という名の Linux ディストリビューション CD を作ろうとしていたときでした。自分のプ     ロジェクトに対応させるには、Debian の中核システムにはもっと作業が 必要なことが判り、Bruce さんは自分のハム無線ディストリビューショ ンを延期して、(Ian Murdock さんとともに) 最初の Debian インストー ルスクリプト一式 (これはこの後数回のリリースで Debian インストー ルツールセットの中核を構成することになる Debian レスキューフロッ ピーになりました) を組織化することを含む、基本的な Linux システム と関連するインストールツールの作業にのめりこむようになりました。     Ian Murdock さんは次のように述べています: 「Bruce さんは私の後継者として自然な選択でした。なぜなら彼は 1 年     近くもの間基本システムを開発していて、私が Debian に提供できる時 間が急速に減っていくにつれて弛んだ部分を拾いあげていったからです 」 Bruce さんは Debian フリーソフトウェアガイドラインと Debian 社会 契約を作るための労力をまとめること、またオープンハードウェアプロ     ジェクトの創設を含むプロジェクトの重要な側面を始めました。Bruce さんがプロジェクトリーダーを務める間に、Debian は市場シェアと、ま じめで、優れた技術を持つ Linux ユーザのためのプラットフォームとし ての名声を獲得しました。 Bruce Perens さんはまた、Software in the Public Interest, Inc. を 設立する努力の先頭にも立ちました。もともとは Debian プロジェクト     に寄付を受けいれることができる法人格を提供することが狙いでしたが 、その目的は Debian プロジェクト以外のフリーソフトウェアプロジェ クトを支援することも含むように、まもなく拡大されました。     この頃、次の Debian バージョンがリリースされました: * 1.1 Buzz 1996 年 6 月リリース (474 個のパッケージ、2.0 カーネ ル、ELF 形式のみ、dpkg)     * 1.2 Rex 1996 年 12 月リリース (848 個のパッケージ、120 人の開 発者) * 1.3 Bo 1997 年 7 月リリース (974 個のパッケージ、200 人の開発 者)     1.3 には中間の「ポイント」リリースが何回か行なわれました。その最 後は 1.3.1R6 です。 Bruce Perens さんは 2.0 リリースを準備する過程の大部分でプロジェ     クトを率いた後、1998 年 1 月初めに Debian プロジェクトリーダーの 職を Ian Jackson さんに引きつぎました。 4.4. 2.x リリース Ian Jackson さんは、1998 年初めに Debian プロジェクトのリーダーに 就任しました。その直後、Software in the Public Interest の取締役 会に副社長として迎えられました。財務担当 (Tim Sailer)、社長     (Bruce Perens) そして書記官 (Ian Murdock) が辞任した後、Jackson さんは社長になり、3 人の新メンバーが選ばれました: Martin Schulze (副社長)、Dale Scheetz (書記官)、そして Nils Lohner (財務担当) で す。 Debian 2.0 (Hamm) は、1998 年 7 月に Intel i386 および Motorola 68000 系列アーキテクチャ向けにリリースされました。このリリースは     、システム C ライブラリの新バージョン (glibc2、歴史的な理由から libc6 とも呼ばれています) への移行を果たしました。リリース時点で は、400 人以上の Debian 開発者によって保守される 1500 個以上のパ ッケージがありました。 1999 年 1 月、Wichert Akkerman さんが Ian Jackson さんから Debian     プロジェクトリーダー職を引き継ぎました。Debian 2.1 は最終段階でい くつかの問題が起きたため、1 週間遅れで 1999 年 3 月 9 日にリリー スされました。 Debian 2.1 (Slink) は 2 種類の新しいアーキテクチャに公式対応して いました: Alpha と Sparc です。 Debian 2.1 に収録された X-Window パッケージは以前のリリースから大きく再編され、また 2.1 は次世代の     Debian パッケージ管理インターフェイスである apt も収録していまし た。さらに、この Debian リリースは「公式 Debian CD セット」に 2 枚の CD-ROM が必要となる初めての Debian リリースでした; 約 2250 個のパッケージが収録されていました。 1999 年 4 月 21 日、Corel が Debian および KDE グループによって作 られたデスクトップ環境を元にした Linux ディストリビューションをリ リースする計画だと発表した時、Corel Corporation と K デスクトップ プロジェクトが Debian と事実上の同盟を結成しました。その春と夏の     間、また別の Debian ベースのディストリビューションである Storm Linux が出現し、Debian プロジェクトは CD-ROM や公式プロジェクトウ ェブサイトといった Debian 公認の物品で使うための公式バージョンと 、Debian に言及するか由来する物品で使うための非公式ロゴからなる新 しいロゴを採択しました。 新しい、独特な Debian 移植版が始まったのもこの頃です。すなわち     Hurd への移植版です。これは Linux 以外のカーネルを使う初めての移 植版で、代わりに GNU Mach マイクロカーネルの一種である GNU Hurd を使っています。 Debian developers joined formally for the first time in an annual meeting called DebConf. The first meeting, called Debconf0, took     place in Bordeaux, France from the 5th to the 9th of July 2000. The conference aim was to join developers and advanced users in a single place to talk about Debian and work together developing parts of the distribution. Debian 2.2 (Potato) は、2000 年 8 月 15 日に Intel i386、Motorola 68000 シリーズ、alpha, SUN Sparc, PowerPC そして ARM アーキテクチ     ャ向けにリリースされました。これは PowerPC と ARM への移植版を含 む初めてのリリースでした。このリリース時点では、450 人以上の Debian 開発者によって保守される 3900 個以上のバイナリパッケージと 、2600 個以上のソースパッケージがありました。 An interesting fact about Debian 2.2 is that it showed how an free software effort could lead to a modern operating system     despite all the issues around it. This was studied thoroughly by a group of interested people in an article called Counting potatoes: The size of Debian 2.2, by Jesús González Barahona, quoting from this article: 「[...] 我々は David A. Wheeler 作の sloccount システムを使い、 Debian 2.2 (別名 potato) の有意なコードのソース行数 (SLOC) を測定 した。Debian 2.2 には、(約 8 ヶ月後にリリースされた Red Hat 7.1 のほぼ倍にあたる) 55,000,000 行以上の有意な SLOC があり、(世界中 に散らばっているボランティアの開発者からなる巨大なグループの作業 を元にした) Debian の開発モデルは、少なくとも他の開発手法に匹敵は     することが示されている [...] また、もし Debian が伝統的なプロプラ イエタリな手法を使って開発されていたなら、COCOMO モデルで見積った Debian 2.2 の開発コストは 19 億米ドル近くにもなるであろうことも示 されている。さらに我々は、Debian 2.2 で使われたプログラミング言語 (C が約 70%、C++ が約 10%、Lisp とシェルがおおよそ 5%、その他大勢 があとに続く) と、大規模なパッケージ (Mozilla、 Linux カーネル、 PM3、XFree86、その他) に関する分析も提供する」 4.5. 3.x リリース woody がリリースの準備に取りかかれるようになる前に、ftp-master 上 のアーカイブシステムに変更が加えられなければなりませんでした。 woody のリリースを準備するために初めて使われる新しい "テスト版" ディストリビューションといった、特別な目的のディストリビューショ     ンを可能にするパッケージプールが、2000 年 12 月半ばにftp-master 上で稼働を始めました。パッケージプールは既存パッケージの異なるバ ージョンを集めたものにすぎず、複数のディストリビューション (現在 のところ experimental、不安定版、テスト版、安定版) はそこからパッ ケージを取得することができ、各々の Packages ファイルに収録されま す。 同時にテスト版という新ディストリビューションが導入されました。主 に、不安定版の中で安定していると思われるパッケージが (数週間後に)     テスト版に移されます。テスト版導入の目的は、フリーズ期間の短縮と 、プロジェクトがいつでも新リリースの準備を行なえるようにすること です。 この期間に、Debian のモディファイ版を出荷していた企業のいくつかが 、消えてなくなりました。Corel は 2001 年の第 1 四半期に同社の     Linux 部門を売却し、Stormix は 2001 年 1 月 17 日に破産を宣告し、 Progeny は 2001 年 10 月 1 日に同社製ディストリビューションの開発 を停止しました。 次期リリースへ向けたフリーズは、2001 年 6 月 1 日に始まりました。 しかしながら、プロジェクトが次期リリースを完成させるまでには、そ れから 1 年強の時間を要したのです。その理由は起動フロッピーの問題 や、main アーカイブへの暗号化ソフトウェアの導入、プロジェクトの根 底にあるアーキテクチャの変更 (incoming アーカイブとセキュリティア ーキテクチャ) などでした。しかしこの期間に、安定版リリース (Debian 2.2) は 7 度も改訂され、Ben Collins さん (2001 年) と     Bdale Garbee さんという 2 人のプロジェクトリーダーが選出されまし た。さらに、パッケージ化以外にも Debian 関連の多くの作業は成長を 続けました。その中には国際化も含まれており、(1000 以上のページが ある) Debian のウェブサイトは 20 ヶ国以上の言語に翻訳され、次期リ リース版のインストールでは 23 ヶ国語に対応していました。Debian Junior (子供向け) と Debian Med (医学の学習研究用) という 2 つの 内部プロジェクトも woody のリリース準備期間中に始まり、Debian を その種の業務に適したものとするための異なる焦点をプロジェクトにも たらしました。 The work around Debian didn't stop the developers from joining the annual DebConf meeting. The second meeting Debconf1 was held     from the 2nd to the 5th of July together with the Libre Software Meeting (LSM) at Bordeaux (France) gathered around forty Debian developers. The third conference, Debconf2 took place in Toronto (Canada) July 5th 2002 with over eighty participants. Debian 3.0 (woody) は 2002 年 7 月 19 日にリリースされ、Intel i386、Motorola 68000 系列、 alpha、SUN Sparc、PowerPC、ARM、HP PA-RISC、IA-64、MIPS、MIPS (DEC)、IBM s/390 といったアーキテクチ     ャに対応していました。HP PA-RISC、IA-64、MIPS、MIPS (DEC)、IBM s/ 390 などの移植版が収録された初めてのリリースです。このリリース時 点では、900 人以上の Debian 開発者によって保守される約 8500 個の バイナリパッケージがあり、CD-ROM に加えて初めて DVD メディアでも 入手できるようになりました。 Before the next release the DebConf annual meeting continued with the fourth conference, DebConf3 taking place in Oslo from July 18th to July 20th 2003 with over one hundred and twenty     participants, with a DebCamp preceding it, from July 12th to July 17th. The fifth conference, DebConf4, took place from May 26th to June 2nd 2004 in Porto Alegre, Brazil with over one hundred and sixty participants from twenty six different countries. Debian 3.1 (sarge) was released June 6th, 2005 for the same architectures as woody, although an unofficial AMD64 port was released at the same time using the project hosting     infrastructure provided for the distribution and available at Alioth (formerly at https://alioth.debian.org). There were around 15,000 binary packages maintained by more than nine hundred Debian developers. sarge のリリースでは多くの大規模な変更がなされましたが、大半は同 ディストリビューションのフリーズとリリースに要した長きにわたる時 間によるものです。sarge では、従来バージョンにもあったソフトウェ     アの 73% 以上が更新されただけでなく、9000 個もの大量の新規パッケ ージが収録され、サイズ的には従来リリースの倍近くになりました。新 規パッケージには、OpenOffice スイート、Firefox ウェブブラウザ、 Thunderbird 電子メールクライアントなどが含まれます。 This release shipped with the 2.4 and 2.6 Linux kernel series, XFree86 4.3, GNOME 2.8 and KDE 3.3 and with a brand new installer. This new installer replaced the aging boot-floppies installer with a modular design with provided for more advanced installations (with RAID, XFS and LVM support) including hardware detection and making installations easier for novice users of all     the architectures. It also switched to aptitude as the selected tool for package management. But the installation system also boasted full internationalization support as the software was translated into almost forty languages. The supporting documentation: installation manual and release notes, were made available with the release in ten and fifteen different languages respectively. sarge には、Debian-Edu/Skolelinux や Debian-Med、 Debian-Accessibility といったサブプロジェクトによる成果も取り込ま     れています。これらのサブプロジェクトにより、教育用パッケージや医 療団体用パッケージ、それに障碍のある人向けに特別に設計されたパッ ケージの数は増加の一途をたどっています。 The sixth DebConf, Debconf5 was held in Espoo, Finland, from July     10th to July 17th, 2005 with over three hundred participants. Videos from this conference are available online. The seventh DebConf, Debconf6 was held in Oaxtepec, Mexico, from     May 14th to May 22nd, 2006 with around two hundred participants. Videos and pictures from this conference are available online. 4.6. 4.x リリース Debian 4.0 (etch) は、2007 年 4 月 8 日にリリースされ、対応アーキ テクチャの数は sarge から変わりませんでした。AMD64 移植版を取り込     みましたが、m68k のサポートを打ち切りました。ただ、この m68k 移植 版は、不安定版ディストリビューションでまだ利用できるようになって いました。1030 人以上の Debian 開発者によって保守される約 18,200 個のバイナリパッケージがありました。 4.7. 5.x リリース Debian 5.0 (lenny) は、2009 年 2 月 14 日にリリースされ、対応アー キテクチャの数は前のリリース etch から 1 つ増えました。新しい ARM プロセッサ向け移植版を取り込みました。前回のリリースと同様、m68k     アーキテクチャは不安定版ディストリビューションでまだ利用できるよ うになっていました。1010 人以上の Debian 開発者によって保守される (12,000 個以上のソースパッケージから構築された) 約 23,000 個のバ イナリパッケージがありました。 With the release of Debian lenny, the naming scheme for point releases was changed: point releases will use a true micro     version number, so the first point release of Debian lenny will be 5.0.1. In the past point releases were named by an r plus the number appended to major and minor number, e.g. 4.0r1. The eighth DebConf, Debconf7, was held in Edinburgh, Scotland,     from June 17th to 23th, 2007 with over four hundred participants. Videos and pictures from this conference are available online. The ninth DebConf, Debconf8, was held in Mar de Plata, Argentina,     from August 10th to 16th, 2008 with over two hundred participants. Videos and pictures from this conference are available online. The tenth DebConf, Debconf9, was held in Cáceres, Spain, from     July 23th to 30th, 2009 with over two hundred participants. Videos and pictures from this conference are available online. The eleventh DebConf, Debconf10, was held in New York City, United States of America, from August 1st to 7th, 2010 with     DebCamp preceding it from July 25th to 31st. Over 200 people including Debian developers, maintainers, users gathered at the Columbia Campus to participate in the conference. Videos and pictures from this conference are available online. 4.8. 6.x リリース     Debian 6.0 (squeeze) は、2011 年 2 月 6 日にリリースされました。 2009 年 7 月 29 日に Debian は時間ベースのフリーズを採用すること     を決定し、その後の新リリースは偶数年の前半のある時点に行われるこ とにしました。Squeeze は 2 年ごとという新しい時間計画に移るための 一度きりの例外ということになっていました。 この方針が採用されたのは、Debian ディストリビューションのユーザに よりよいリリース予測可能性を提供するため、また、Debian 開発者がよ りよい長期計画を立てられるようにするためでした。2 年ごとのリリー     スサイクルならば破壊的な変更にもっと多くの時間を充てられるので、 ユーザに不便を強いることを減らすことになります。フリーズが予測で きることで、全体としてのフリーズ期間の短縮にもつながることが期待 されていました。 しかし、このリリースは 2009 年 12 月にフリーズされる予定だったに     もかかわらず、そのsqueeze フリーズの発表があったのは 2010 年 8 月 でした。これは年一度で 10 回目の DebConf 会議がニューヨークで開か れているとき行われ、お祝いになりました。     次の新機能があります: * Linux カーネル 2.6.32: ついに完全にフリーになり、問題のあるフ ァームウェアファイルが削除されました。 * libc: eglibc 2.11 * GNOME 2.30.0、一部 2.32 * KDE 4.4.5 * X.org 7.5 * Xfce 4.6 * OpenOffice.org 3.2.1 * Apache 2.2.16 * PHP 5.3.3 * MySQL 5.1.49     * PostgreSQL 8.4.6 * Samba 3.5.6 * GCC 4.4 * Perl 5.10 * Python 2.6 および 3.1 * 約 15,000 個のソースパッケージから構築された 29,000 個を超え るバイナリパッケージのうち、10,000 個が新規パッケージ。 * DKMS: Linux カーネルのソースツリーには含まれないソースの Linux カーネルモジュールを生成するフレームワーク。 * insserv を使った依存関係ベースの init スクリプトの並び替えに より、並列に実行してシステムの起動にかかる時間を短縮しました 。 * 2 つの新たな移植版、kfreebsd-i386 および kfreebsd-amd64。 多くのパッケージが quilt をベースにした新ソースパッケージフォーマ ットを利用しはじめました。この新フォーマットは非ネイティブなパッ ケージでは "3.0 (quilt)" という名前のもので、配布されているソース     コードと Debian のパッチを分離します。ネイティブなパッケージ用に も新フォーマット "3.0 (native)" が導入されました。これらのフォー マットには、上流の複数の tarball のサポート、bzip2 や lzma で圧縮 された tarball のサポート、バイナリファイルを同梱できる、といった 新機能があります。 The twelfth DebConf, Debconf11, was held in Banja Luka, Republic     of Srpska, Bosnia and Herzegovina, from 24 to 30 July 2011, with DebCamp preceding it from 17 to 23 July. The thirteenth DebConf, Debconf12, was held in Managua,     Nicaragua, from 8 to 14 July 2012, with DebCamp preceding it from 1 to 6 July, and a Debian Day on 7 July. 4.9. 7.x リリース Debian 7.0 (wheezy) は、2013 年 5 月 4 日にリリースされました。こ の新しいバージョンの Debian では、multiarch のサポートやプライベ     ートクラウドの展開に特化したツール群、改善したインストーラ、サー ドパーティリポジトリをもはや不要とするマルチメディア用コーデック やフロントエンド一式等、様々な興味深い機能が収録されています。 After the release of Debian wheezy, the naming scheme for point releases was changed once again: point releases will be named by     the minor version number, e.g. 7.1. In the past point releases were named by the micro number appended to major and minor number, e.g. 6.0.1. 2011 年 7 月に行われた Debian カンファレンス DebConf11 の期間中、 「multiarch のサポート」が紹介されました。この機能はこのリリース の目標でした。Multiarch は全く同一のシステムに異なるハードウェア アーキテクチャのプログラムやライブラリを同時に簡単にインストール できるようにするもので、ライブラリやヘッダのパスについての観点か     らファイルシステムの構造を根本的に考え直すことになりました。これ によってユーザは同一マシンに複数のアーキテクチャからパッケージを インストールできるようになります。これは様々な面で便利なことです が、最も一般的なのは 64 ビットと 32 ビットのソフトウェアを同一マ シンにインストールすることで、その依存関係は自動的に正しく解決さ れます。この機能は Multiarch マニュアルで詳しく説明されています。 インストールプロセスは大きく改善しました。ソフトウェアによる音声 案内を利用することで、特に点字デバイスを使わない視力障害者がイン ストールすることができるようになっています。莫大な数の翻訳者の協     力のおかげで、インストールシステムは 73 の言語で利用可能となり、 音声合成を利用可能な言語も多数あります。さらに、Debian は新しい 64 ビット PC 向けに、UEFI を使用したインストールやブートを初めて サポートしています。ただし、セキュアブートのサポートはまだありま せん。     他の新機能や更新されたソフトウェアパッケージ: * Linux カーネル 3.2 * kFreeBSD カーネル、8.3 と 9.0 * libc: eglibc 2.13 * GNOME 3.4 デスクトップ環境 * KDE Plasma Workspaces および KDE Applications 4.8.4 * Xfce 4.8 デスクトップ環境 * X.org 7.7 * LibreOffice 3.5.4 (OpenOffice を置き換え) * Xen Hypervisor 4.1.4     * Apache 2.2.22 * Tomcat、6.0.35 と 7.0.28 * PHP 5.4 * MySQL 5.5.30 * PostgreSQL 9.1 * Samba 3.6.6 * GCC 4.7、PC 向け (他は 4.6) * Perl 5.14 * Python 2.7 * 約 12,800 個のソースパッケージから構築された 37,400 個を超え るバイナリパッケージのうち、17,500 個が新規パッケージ。     このリリースで導入された新機能に関する情報については、Wheezy リリ ースノートの Debian 7.0 の新機能の章を見てください。 The fourteenth DebConf Debconf13, was held in Vaumarcus,     Switzerland, from 11 to 18 August 2013, with DebCamp preceding it from 6 to 10 August, and a Debian Day on 11 August. The fifteenth DebConf Debconf14, was held in Portland, United     States of America, from 23 to 31 August 2014. With 301 attendees it was the largest Debconf in the Western hemisphere to date. 4.10. 8.x リリース     Debian 8.0 (Jessie) は、2015 年 4 月 25 日にリリースされました。 A major change in this release was the replacement of the init system: systemd replaced sysvinit. This new init system featured     many improvements and faster boot times. Its inclusion, however, sparked a lot of debate in the different mailing lists and even led to a General Resolution titled init system coupling. which was voted by close to half of the developers^[2].     他の新機能や更新されたソフトウェアパッケージ: * Apache 2.4.10 * Asterisk 11.13.1 * GIMP 2.8.14 * 更新された GNOME 3.14 デスクトップ環境 * GNU Compiler Collection 4.9.2 * Icedove 31.6.0 (Mozilla Thunderbird の商標のないバージョン) * Iceweasel 31.6.0esr (Mozilla Firefox の商標のないバージョン) * KDE Plasma Workspaces および KDE Applications 4.11.13 * LibreOffice 4.3.3 * Linux 3.16.7-ctk9 * MariaDB 10.0.16 及び MySQL 5.5.42     * Nagios 3.5.1 * OpenJDK 7u75 * Perl 5.20.2 * PHP 5.6.7 * PostgreSQL 9.4.1 * Python 2.7.9 および 3.4.2 * Samba 4.1.17 * Tomcat、7.0.56 と 8.0.14 * Xen Hypervisor 4.4.1 * Xfce 4.10 デスクトップ環境 * 約 20,100 個のソースパッケージから構築されたその他 43,000 個 を超えるバイナリパッケージ。     このリリースで導入された新機能に関する情報については、Jessie リリ ースノートの Debian 8.0 の新機能の章を見てください。 The sixteenth DebConf Debconf15, with DebCamp and the Open     Weekend, took place in Heidelberg, Germany, from 9 to 22 August 2015. The seventeenth DebConf Debconf16 was held in Cape Town, South     Africa, from 23 June to 9 July 2016 (preceded by DebCamp and DebianDay). It was the first DebConf in Africa. 4.11. The 9.x Releases     Debian 9.0 (Stretch) was released June 17th, 2017.     New features and updated software packages included: * Apache 2.4.23 * Bind 9.10 * Calligra 2.9 * Emacs 25.1 * Firefox 50.0 * GNOME desktop environment 3.22 * GNU Compiler Collection 6.3 * GnuPG 2.1 * KDE Plasma Workspaces and KDE Applications 5.8 * LibreOffice 5.2.7 * Linux 4.9     * MariaDB 10.1 * OpenJDK 8 * OpenSSH 7.4p1 * Perl 5.24 * PHP 7.0 * Postfix 3.1 * PostgreSQL 9.6 * Python 3.5 * Samba 4.5.8 * Xen Hypervisor 4.8.1 * the Xfce 4.12 desktop environment * more than 51,000 other ready-to-use software packages, built from nearly 25,000 source packages. For more information on the new features introduced in this     release, see the What's new in Debian 9.0 chapter of Stretch Release Notes. The eighteenth DebConf Debconf17 took place in Montreal, Canada,     from 31 July to 12 August 2017, preceded by its DebCamp and the DebianDay. The nineteenth DebConf Debconf18 - the first DebConf in Asia -     was held in Hsinchu, Taiwan, from 21 July to 5 August 2018, traditionally preceded by the DebCamp and an Open Day for the public. 4.12. The 10.x Releases     Debian 10.0 (Buster) was released July 6th, 2019.     New features and updated software packages included: * Apache 2.4.38 * Bind 9.11 * Calligra 3.1 * Emacs 26.1 * Firefox 60.7 * GNOME desktop environment 3.30 * GNU Compiler Collection 8.3 * GnuPG 2.2 * KDE Plasma Workspaces and KDE Applications 5.14 * LibreOffice 6.1 * Linux 4.19     * MariaDB 10.3 * OpenJDK 11 * OpenSSH 7.9p1 * Perl 5.28 * PHP 7.3 * Postfix 3.3.2 * PostgreSQL 11 * Python 3.7.3 * Rustc 1.34 * Samba 4.9 * the Xfce 4.12 desktop environment * more than 57,700 other ready-to-use software packages, built from nearly 25,000 source packages. For more information on the new features introduced in this     release, see the What's new in Debian 10.0 chapter of Buster Release Notes. Right after the release of Buster, the twentieth DebConf     Debconf19 took place in Curitiba, Brazil, from 14 to 28 July 2019, together with DebCamp and an Open Day.     The twenty-first DebConf Debconf20 was held online - due to COVID-19 - from August 23rd to 29th, 2020. 4.13. The 11.x Releases     Debian 11.0 (Bullseye) was released August 14th, 2021.     New features and updated software packages included: * Apache 2.4.48 * Bind 9.16 * Calligra 3.2 * Emacs 27.1 * Firefox 78 * GNOME desktop environment 3.38 * GNU Compiler Collection 10.2 * GnuPG 2.2.27 * KDE Plasma Workspaces and KDE Applications 5.20 * LibreOffice 7.0 * Linux 5.10     * MariaDB 10.5 * OpenJDK 11 * OpenSSH 8.4p1 * Perl 5.32 * PHP 7.4 * Postfix 3.5 * PostgreSQL 13 * Python 3.9.1 * Rustc 1.48 * Samba 4.13 * the Xfce 4.16 desktop environment * more than 59,500 other ready-to-use software packages, built from more than 25,000 source packages. For more information on the new features introduced in this     release, see the What's new in Debian 11.0 chapter of Bullseye Release Notes. Right after the release of Bullseye, the twenty-second DebConf     Debconf21 was held online - due to COVID-19 - from August 24 to August 28, 2021. It was preceded by an (online) DebCamp from August 15 to August 23, 2021. DebConf22, the 23rd annual Debian Conference, took place in Prizren, Kosovo from July 17th to 24th, 2022. We've hosted 260     attendees from 38 different countries participating in 91 event talks, discussion sessions, Birds of a Feather (BoF) gatherings, workshops, and other activities. DebConf23, took place in Kochi, India from September 10th to 17th, 2023. Over 474 attendees representing 35 countries from     around the world came together for a combined 89 events made up of Talks, Discussons, Birds of a Feather (BoF) gatherings, workshops, and other activities. --------------------------------------------------------------------- ^[2] In the Debian Project Leader Elections of the previous four     years the number of voters had been usually around 40% of the existing Debian Developers Chapter 5. Some Important Events 5.1. 2000 年 10 月: パッケージプールの実装 James Troup さんは、アーカイブ保守ツールの再実装を行ない、パッケ ージプールに移行したと報告しました。この日より、ファイルは pools ディレクトリ内のソースパッケージに対応した名前のディレクトリに保 存されるようになりました。ディストリビューションのディレクトリに     は、プールへの参照が含まれた Packages ファイルだけが収められてい ます。これにより、テスト版や不安定版といったディストリビューショ ン間での重複が単純化されました。このアーカイブは PostgreSQL を使 ったデータベース駆動型でもあり、ロックアップも高速化されています 。 この Debian のアーカイブ管理方法の考え方は、1998 年 5 月に Bdale     Garbee さんによりこのメールでパッケージのキャッシュが初めて debian-devel メーリングリストに紹介されたときと同じようなものです 。 5.2. 2002 年 11 月: Debian サーバ焼失 2002 年 11 月 20 日の 08:00 CET (中央ヨーロッパ時間) 頃、オランダ にあるトゥエンテ大学のネットワークオペレーションセンターで火災が 発生しました。建物は全焼しました。消防署はサーバエリアを救う望み     を諦めました。とりわけ NOC では satie.debian.org が運用されており 、そこにはセキュリティおよび non-US アーカイブと、新規メンテナ (nm) および品質保証 (qa) データベースが含まれていました。Debian はこれらのサービスを klecker という名のホストで再構築しましたが、 最近になって klecker はアメリカからオランダに移されました。 5.3. November 2003: Several Debian servers hacked Starting 17:00 UTC on November 19th, 2003, four of the project's main Web servers for bug tracking, mailing lists, security and     Web searches have been compromised. The services were taken down for inspection and fortunately it could be confirmed, that the package archive was not affected by this compromise. On November 25th, all services were recovered and back online. Chapter 6. Remembering People We Have Lost 6.1. 2000 年 7 月: Joel Klecker さん逝去 On July 11th, 2000, Joel Klecker, who was also known as Espy, passed away at 21 years of age. No one who saw 'Espy' in # mklinux, the Debian lists or channels knew that behind this     nickname was a young man suffering from a form of Duchenne muscular dystrophy. Most people only knew him as 'the Debian glibc and powerpc guy' and had no idea of the hardships Joel fought. Though physically impaired, he shared his great mind with others.     Joel Klecker (別名 Espy) さんに心より哀悼の意を表します。 6.2. 2001 年 3 月: Christopher Rutter さん逝去 2001 年 3 月 1 日、Christopher Matthew Rutter (別名 cmr) さんが、     交通事故により 19 歳で命を落としました。Christopher さんは Debian プロジェクトの若く有名なメンバーで、ARM 移植版を手伝っていました 。buildd.debian.org のサイトをもって追悼を捧げます。     Chris Rutter さんに心より哀悼の意を表します。 6.3. 2001 年 3 月: Fabrizio Polacco さん逝去 2001 年 3 月 28 日、Fabrizio Polacco さんが長い闘病生活の末、この 世を去りました。Debian プロジェクトは、Fabrizio さんによる Debian     とフリーソフトウェアでの優れた作業と多大な献身に敬意を表します。 Fabrizio さんの貢献は忘れられることなく、他の開発者が Fabrizio さ んの業績を引き継ぐべく前進するでしょう。     Fabrizio Polacco さんに心より哀悼の意を表します。 6.4. 2002 年 7 月: Martin Butterweck さん逝去 2002 年 7 月 21 日、Martin Butterweck (別名 blendi) さんが、白血     病と闘った末、亡くなりました。Martin さんは Debian プロジェクトの 若いメンバーで、プロジェクトに加わったばかりでした。     Martin Butterweck さんに心より哀悼の意を表します。 6.5. 2004 年 5 月: Manuel Estrada Sainz さん、Andrés García Solier さ ん逝去 5 月 9 日、Manuel Estrada Sainz (ranty) さんと Andrés García     Solier (ErConde) さんが、スペインのバレンシアで開催されたフリーソ フトウェアカンファレンスからの帰途、痛ましい交通事故で命を落とし ました。     Manuel Estrada Sainz さんと Andrés García Solier さんに心より哀悼 の意を表します。 6.6. 2005 年 7 月: Jens Schmalzing さん逝去 7 月 30 日、Jens Schmalzing (jensen) さんがドイツのミュンヘンにあ る職場で発生した痛ましい事故により亡くなりました。Jens さんは Debian に参加して各種パッケージのメンテナ、PowerPC 移植版のサポー     ター、カーネルチームのメンバーとして活躍し、PowerPC カーネルパッ ケージをバージョン 2.6 に上げる手助けをしました。また、 Mac-on-Linux やそのカーネルモジュールのメンテナでもあり、インスト ーラや地元のミュンヘンでの活動を援助したりもしました。     Jens Schmalzing さんに心より哀悼の意を表します。 6.7. 2008 年 12 月: Thiemo Seufer さん逝去 12 月 26 日、Thiemo Seufer (ths) さんが交通事故で亡くなりました。 Thiemo さんは MIPS と MIPSEL 移植版の代表メンテナで、Debian 開発     者になる 2004 年よりもかなり昔から長い間 debian-installer にも貢 献しました。QEMU チームのメンバーとして Thiemo さんは MIPS エミュ レーションレイヤーのほとんどを書きました。     Thiemo Seufer さんに心より哀悼の意を表します。 6.8. July 2009: Steve Greenland died On July 18th Steve Greenland (stevegr) died of cancer. He was the     maintainer of many core packages (such as cron) since he joined Debian in 1999.     Steve Greenland will be missed. 6.9. 2010 年 8 月: Frans Pop さん逝去 Frans Pop (fjp) さんが 8 月 20 日に亡くなりました。Frans さんは Debian に参加し、いくつかのパッケージのメンテナや S/390 移植版の     支援を行い、そして Debian Installer チームに最も関わったメンバー の 1 人でした。Debian メーリングリストの管理者で、インストールガ イドとリリースノートの編集者兼リリースマネージャであり、オランダ 語の翻訳者でもありました。     Frans Pop さんに心より哀悼の意を表します。 6.10. 2011 年 4 月: Adrian von Bidder さん逝去 Adrian von Bidder (cmot) さんが 4 月 17 日に亡くなりました。 Adrian さんは debian.ch の創設メンバーの1人であり書記でした。彼に     よる提案の多くは今の Debian Switzerland の原型となりました。また 、Adrian さんは Debian パッケージアーカイブにあるソフトウェアを積 極的に保守し、プロジェクトを代表して多数のイベントに出席していま した。     Adrian von Bidder さんに心より哀悼の意を表します。 6.11. 2013 年 5 月: Ray Dassen さん逝去 Ray Dassen (jdassen) さんが 5 月 18 日に亡くなりました。Ray さん は19年間、桁外れの Debian 開発者でした。プロジェクトには1994年に 参加し、亡くなるまで積極的な貢献者であり続けました。Ray さんは     Debian GNOME チームの創設メンバーの1人で、親切に快く支援する行動 は GNOME チーム内の協力する精神を育てました。Debian では、複数の パッケージ、特に目立つものとしては Gnumeric スプレッドシートのメ ンテナとして関わり続けました。     Ray Dassen さんに心より哀悼の意を表します。 6.12. 2014 年 7 月: Peter Miller さん逝去 Peter Miller さんが 7 月 27 日に亡くなりました。Peter さんは Debian プロジェクトでは比較的新人でしたが、彼のフリー及びオープン ソースソフトウェアへの貢献は 1980 年代後半に遡ります。Peter さん     は GNU gettext への多大な貢献者であると同時に、他の上流のプロジェ クトでは例えば srecord や aegis、cook 等、Debian に収録されている ソフトウェアの中心的な作者及びメンテナでもありました。また、Peter さんは Recursive Make Considered Harmful 紙の著者でもありました。     Peter Miller さんに心より哀悼の意を表します。 6.13. 2015 年 2 月: Clytie Siddall さん逝去 Clytie Siddall さんが 2015 年 2 月に亡くなりました。Clytie さんは Debian その他のプロジェクトで長年ベトナム語翻訳に貢献しました。     Debian 内ではインストーラや dpkg、apt その他様々な文書を翻訳しま した。 GNOME コミュニティやその他多数のプロジェクトでも翻訳で貢献 しました。Clytie さんは 2005 年から 2007 年まで GNOME Foundation のメンバーでもありました。     Clytie Siddall さんに心より哀悼の意を表します。 6.14. 2015 年 12 月: Ian Murdock さん逝去 Debian プロジェクト及びそのコミュニティの創設者である Ian Murdock さんが 2015 年 12 月に亡くなりました。Ian さんは幼少の頃からコン ピュータに触れ、9歳の時から積極的にプログラミングを始めました。何 かをより良くしようという考えと機会を得て、1993 年 8 月、Debian プ ロジェクトを立ち上げました。当時は、Linux の「ディストリビューシ ョン」という概念自体が新しいものでした。Linus Torvalds 自身が Linux をシェアしたことに鼓舞された、と彼が言うように、このディス     トリビューションは開かれた、Linux と GNU の精神に則ったものにすべ きだという意志を持って Debian を発表しました。Ian さんの夢は Debian が開発を促進し、発展する不思議で強力なコミュニティで構成さ れるものになることでした。極めて積極的な数千の開発者が膨大な時間 をかけて作業し、信頼性が高く安全なオペレーティングシステムを世界 に届け続けています。Debian は何かをより良くしたいと考える人たちの 利害や好奇心、情熱を刺激してきました。それから、今も、そして未来 も続きます。     The Debian 9 Stretch release was dedicated in his memory.     Ian Murdock さんに心より哀悼の意を表します。 6.15. 2016 年 9 月: Kristoffer H. Rose さん逝去 Kristoffer H. Rose died on September 17th 2016 after a long battle with myelofibrosis. Kristoffer was a Debian contributor from the very early days of the project, and the upstream author     of several packages, such as the LaTeX package Xy-pic and FlexML. On his return to the project after several years' absence, many of us had the pleasure of meeting Kristoffer during DebConf15 in Heidelberg.     Kristoffer H. Rose will be missed. 6.16. September 2018: Innocent de Marchi died Innocent was a math teacher and a free software developer. One of his passions was tangram puzzles, which led him to write a     tangram-like game that he later packaged and maintained in Debian. Soon his contributions expanded to other areas, and he also worked as a tireless translator into Catalan. Innocent de Marchi will be missed. 6.17. March 2019: Lucy Wayland died Lucy was a contributor within the Cambridge (UK) Debian community, helping to organise the Cambridge Mini-DebConf since several years. She was a strong fighter for diversity and     inclusion, and participated in the creation of the Debian Diversity Team, working on increasing the visibility of under-represented groups and providing support with respect to diversity issues within the community. Lucy Wayland will be missed. 6.18. June 2020: Robert Lemmen died In June 2020, Robert Lemmen passed away after a serious illness. Robert had been regularly attending the Debian Munich meetups since the early 00s and helped with local booths. He had been a     Debian Developer since 2007. Among other contributions, he packaged modules for Raku (Perl6 at that time) and helped other contributors to get involved in the Raku Team. He also put effort into tracking down circular dependencies in Debian. Robert Lemmen will be missed. 6.19. June 2020: Karl Ramm died Karl Ramm passed away in June 2020, after complications due to metastatic colon cancer. He had been a Debian Developer since     2001 and packaged several components of MIT's Project Athena. He was passionate about technology and Debian, and always interested in helping others to find and promote their passions. Karl Ramm will be missed. 6.20. April 2021: Rogério Theodoro de Brito died In April 2021, we lost Rogério Theodoro de Brito due to the COVID-19 pandemic. Rogério enjoyed coding small tools and had been a Debian contributor for more than 15 years. Among other     projects, he contributed toward the use of Kurobox/Linkstation devices in Debian and maintained the youtube-dl tool. He also participated and was "Debian contact" in several upstream projects. Rogério Theodoro de Brito will be missed. 6.21. September 2023: Abraham Raji died     On 13th September 2023 Abraham Raji was involved in a fatal accident during a kayaking trip. Abraham was a popular and respected Debian Developer as well a prominent free software champion in his home state of Kerala, India. He was a talented graphic designer and led design and     branding work for DebConf23 and several other local events in recent years. Abraham gave his time selflessly when mentoring new contributors to the Debian project, and he was instrumental in creating and maintaining the Debian India website. The Debian Project honors his good work and strong dedication to     Debian and Free Software. Abraham’s contributions will not be forgotten, and the high standards of his work will continue to serve as an inspiration to others. 6.22. December 2023: Gunnar Hjalmarsson died Debian Developer Gunnar Hjalmarsson passed away in 2023. Gunnar was a consistent and valued contributor to Ubuntu since 2010     particularly on internationalization efforts and became similarly involved in Debian. He was an active maintainer in the Debian GNOME and Input Method teams.     Gunnar Hjalmarsson (1958-10-06 - 2023-12-20, Sweden) will be missed. 6.23. July 2024: Peter De Schrijver died Debian Developer (since 2004) and Linux kernel hacker Peter "p2" De Schrijver passed away in July 2024. Many of us knew Peter as a very helpful and dedicated person and we valued his contributions to our project and the Linux community. Peter was a regular and familiar face in many conferences and meets across the world.     Peter was highly regarded for his technical expertise in problem solving and for his willingness to share that knowledge. When asked "what are you working on?", Peter would often take the time to explain something you thought was extremely complicated understandably, or show you in- person his high technical proficiency in action on such tasks as translating a disassembled binary into C source code. Peter's work, ideals, and memory leave a remarkable legacy and a     loss that is felt around the world not only in the many communities he interacted with but in those he inspired and touched as well.     Peter De Schrijver (1970-09-17, Antwerp - 2024-07-12, Finland) will be missed. Chapter 7. 次は何? Debian プロジェクトは、不安定版ディストリビューション (コードネー ム sid。映画 Toy Story 1 より隣家に住む凶悪で「情緒不安定」な少年 から名付けられました。こんな子は、絶対に世の中に出すべきではあり     ません) で作業を続けています。Sid は永久に不安定版のコードネーム であり、常に「開発中 (Still In Development)」です。ほとんどの新規 および更新されたパッケージは、このディストリビューションにアップ ロードされます。     The testing release is intended to become the next stable release and is currently (as of July 2024) codenamed Trixie. Appendix A. Debian 宣言     イアン・マードック著、1994 年 1 月 6 日改定 A.1. Debian Linux とは何か? Debian Linux はまったく新しい Linux ディストリビューションです。 今までに開発された他の Linux ディストリビューションのように限定的 な個人やグループが開発しているものではなく、Linux と GNU の精神に     則り、オープンに開発されています。Debian は、最終的に Linux の名 に恥じないディストリビューションを作り出すことを第一の目的として います。Debian は注意深く、また良心的にディストリビューションをま とめており、同様の配慮で保守・サポートしていく予定です。 Debian は、市場で十分な競争力を持ちえる、商用ではないディストリビ ューションを作り出す試みでもあります。ゆくゆくは Free Software Foundation が CD-ROM で Debian を配布するようになるでしょう。また Debian Linux Association は、印刷されたマニュアルや技術支援などエ ンドユーザに必要なものと一緒に、フロッピーディスクやテープによる 配布を提供することになるでしょう。上記のすべてが原価よりもわずか     に高い金額で入手できるようになり、そのわずかな原価超過分を使って 、すべてのユーザのためのフリーソフトウェアをさらに開発していくこ とになるでしょう。このようなディストリビューションは、市場で Linux オペレーティングシステムが成功するのに欠かせません。また、 十分に先進的な位置にあり、利益や配当の圧力を受けることなくフリー ソフトウェアを広めようとしている組織によってなされなければなりま せん。 A.2. なぜ Debian を作成するのか? Linux の未来にとってディストリビューションは不可欠です。ディスト リビューションを利用すると、ユーザはうまく稼動する Linux システム を組みあげるために必要な、大変な数のツールを探し出してダウンロー ド、コンパイル、インストールしてシステムとしてまとめあげる作業を せずに済むようになります。代わりに、システムを構築する重荷はディ     ストリビューション作成者が背負います。ディストリビューション作成 者がした作業は、何千もの他のユーザと分かちあうことができます。大 抵の Linux ユーザは、ディストリビューションを通して Linux なるも のの最初の感触を得るものです。また、多くのユーザが、このオペレー ティングシステムに慣れてからも、便利さを求めてディストリビューシ ョンを使いつづけるでしょう。つまり、ディストリビューションは本当 に大変重要な役割を担っているのです。 ディストリビューションが明らかに重要であるにもかかわらず、開発者 達はほとんど注意を払わずにいます。単純な理由によります。ディスト リビューションの構築は易しくもないし、魅力的でもないからです。ま た、ディストリビューションのバグをとり、最新の状態に保つために、     作成者は継続的に大変な努力を強いられるからです。0 からシステムを 組みあげるのとは全く別物です。つまり、システムが他人にとってイン ストールしやすく、多様なハードウェア構成にもインストールして使用 でき、使いでがあると人を唸らせるソフトウェアを含み、構成要素その ものが改善されたときにアップデートできることを保証するということ なのです。 多くのディストリビューションがかなりよいシステムとして発表されま した。しかし、時が経つにつれて、ディストリビューションの保守から 次第に関心を失い、二の次になってしまいます。そのよい例が、 Softlanding Linux System (SLS の略称で有名) でしょう。恐らくもっ     ともバグが多く、保守もほとんどなされなかったディストリビューショ ンです。残念ながらこのディストリビューションは、恐らくもっとも多 くの人に使われた物でもありました。まぎれもなく、これは多くの配布 業者からいちばん注目されてしまったディストリビューションだったの です。これらの業者は、このオペレーティングシステムが世に広まって 行くのに便乗していることを露呈してしまいました。 これはまったくひどい組み合せです。この手の配布業者から Linux を得 る多くの人が、バグが含まれている上に保守もされない Linux ディスト リビューションを受け取ってしまうのですから。これだけでは悪行し足 りないかのように、こういった配布業者には、自分達の製品の中の動か なかったり極めて動作が不安定な機能について誤解を与えかねない宣伝 をすると言う困った傾向がありました。このような状況と、購入した人 はその製品が宣伝に違わぬできだろうともちろん予想することと、多く     の人がその製品が商用のオペレーティングシステムだと信じている (Linux がフリーであることや、GNU 一般公衆利用許諾に従って配布され ていることに言及しない傾向もありました) かもしれないことを考えあ わせてみてください。なおその上に、これら配布業者は、より多くの雑 誌で派手に広告を出してもかまわないだけの金を努力して実際に稼ぎ出 しています。単にあまりよくわかっていないだけの者が、容認できない 行動を助長してしまうという古くから見られる事例が見てとれます。あ きらかに、この状況を改善するために何か手を打つ必要があります。 A.3. Debian はこれらの問題に終止符を打つためにどのように努力するつも りなのか? Debian の設計過程は、オープンです。システムが最高の品質を持つこと と、ユーザの共同体の要求を反映させることを保証するためです。能力 と背景に広がりがある他人を巻きこむことで、モジュール化して Debian を開発することが可能になりました。ある分野の専門的知識を持つ者が 、その分野を含んでいる Debian の個々の構成要素を開発したり保守し     たりする機会が与えられるので、その構成要素の品質は高くなります。 他人を巻きこんだことで、改良のための価値ある助言が開発を通してデ ィストリビューションに含まれて行くことも保証されます。そのため、 どちらかというと作成者の要求や欲求よりもユーザの要求や欲求を元に ディストリビューションは作成されます。一人の個人や小グループでは 、直接他人から情報を得なければ、このような要求や欲求を前もって組 み入れることはかなり難しいものです。 Free Software Foundation と Debian Linux Association は物理媒体で も Linux を配布する予定です。これによりインターネットや FTP を使 わなくてもユーザに Debian を提供できます。また、システムのすべて の利用者が印刷された手引き書や技術支援などの製品やサービスを広く     入手できるようにすることもできます。このやりかたなら、Debian はた くさんの個人や組織で使用されるでしょう。収益や配当を得ることでは なく、一級の製品を供給することに焦点をあてています。そして、製品 やサービスから生じた利潤は、対価を支払ってソフトウェアを得たかど うかにかかわりなく、すべての利用者のためにソフトウェア自体を改良 するために使われるでしょう。 Free Software Foundation は Debian の将来にとって大変重要な役割を 果たします。Free Software Foundation が Debian を配布するという単 純な事実によっても、Linux が商用の製品ではなく、今後も決してそう     はならないこと、しかし Linux が商業的な競争に決して勝てはしないと は意味しないことを世に知らしめることになります。同意しない人は、 GNU Emacs と GCC が成功していることを理由付けしていただきたい。こ れらは商用の製品ではありませんが、商用であるかどうかにかかわらず 市場に甚大な影響を与えてきました。 Linux 共同体全体とその未来に迷惑をかけて自分が裕福になるという破 壊的な目標を目指すかわりに、Linux の未来に集中するときがきました     。Debian を開発し配布しても、この宣言で概略を述べた問題への回答と はならないかもしれません。ですが、少なくとも、これらの問題が解決 すべき問題として認められるくらいには Debian を通して注意を引きた いと望んでいます。